使信(2020/04/05)


使信 「真の統治者」 ヨハネによる福音書1828-40

「わたしの国は、この世には属していない」(ヨハネ18:36)。この聖書の言葉から、わたしたちはどのようなメッセージを受け取ることができるでしょうか。旧約聖書によりますと、サムエルの時代までイスラエルの人びとには王がいませんでした。王は子どもたちを徴用したり、畑や作物や家畜を取り上げたりし、民は王の奴隷とされてしまうからです(サムエル記上8章)。


そもそも、サムエルより三百年位前、イスラエルの人びとは、暴君であるエジプト王ファラオから解放されて、ただ神のみを主とする十戒を授けられていたのでした。イスラエルの人びとは、王ではなく、ただ神のみを自分たちの主とする民だったのです。


その千年以上のち、イエスは「神の国は近づいた」(マルコ1:14)と宣べ伝えました。「神の国」とは「神の支配」のことです。けれども、これは暴君による圧政ではなく、野の花、空の鳥を生かすような、愛による「治め」のことでしょう。イエスにとっては、世界を真に統治しているのはユダヤのヘロデ王でもなければ、ローマ皇帝でもなく、ただ神なのです。


今日のヨハネによる福音書のイエスの「わたしの国は、この世には属していない」という言葉も、このような流れで読むことができると思います。


ヨハネ福音書のイエスはさらに言葉を続けます。「わたしが王だとは、あなたが言っていることです。わたしは真理について証しをするために生まれ、そのためにこの世に来た。真理に属する人は皆、わたしの声を聞く。」


「真理」とはなんでしょうか。それはこの世の王とは対照的な存在のことではないでしょうか。大胆に言えば、神のことではないでしょうか。


わたしたちは王ではなく、真理に、神に属するのです。神の国に生きるのです。神の国は、人間の私利私欲、情念ではなく、神の愛に基づく世界です。神が愛に基づいて、わたしたちを治めてくださり、わたしたちがそれに応えて、愛に基づいて、他者とともに生きようと祈る世界です。


コロナウィルスはこれからどうなるのでしょうか。わたしたちの生活や健康、仕事や勉強はどうなるのでしょうか。ウィルスに対しては医学の知恵が尽くされなければなりません。けれども、人の生活、わたしたちの人生については、愛に基づいた判断がなされなければなりません。


わたしたちは、この大きな不安の中、愛によって治めてくださる、と、神に深い信頼を寄せながら、今週も歩もうではありませんか。



祈り:わたしたちのまことの主なる神さま、あなたこそがこの世界の統治者です。この世の出来事や情報に一喜一憂するのではなく、ただあなたを信頼することができますように、わたしたちをお導きください。神さま、不安な友をお支えください。悲しむ友をお慰めください。病の友をお癒しください。孤独な友の友となってください。ひとりひとりの前に道を開いてください。苦しみの底から友を引き上げてください。アーメン。