『静まりから生まれるもの』

 ヘンリ・ナウエン著『静まりから生まれるもの信仰生活における三つの霊想』、このテキストを新しく始まった王禅寺家庭集会で読み合いました。ヘンリ・ナウエンはもう亡くなりましたが、イエール大学やハーバード大学の神学部で教えていたカトリックの神学者です。晩年の10年は、そのような輝かしい業績の一切を捨てて、知的ハンデイを持った仲間達との共同体「ラルシュ」のカナダの共同体に入り、周囲を驚かせました。ナウエンの著作は、現代に生きる私達の孤独や苦悩に深く触れてくるものがあり、そこでこそ神は呼びかけていてくれることを平易な文章で語りかけてくれます。原題の「out of solitude」は直訳すれば、孤独の外側とでもなるでしょうか。日本語では孤独と訳されますが、“静まり”とこの本では意訳しています。人が独りであること―そこには寂しさという負の面と、煩わしさから解放され静まるポジテイブな意味での「独り」があります。Solitudeは積極的な意味での「独り」を現します。その「独り」は、自分自身との対話の時。そこで自分であることを取り戻し、自分でしかできない発見をし、神との対話に至るのです。私達が現代社会の成果主義、業績主義に振り回されている間は、たとえ物理的に独りになっても、真の意味で「独り」ではありません。また、他者の期待や要望に振り回されているのも同様です。人は「独り」になることを恐れます。しかし、静まること、自分自身であろうと欲する勇気を持つこと、そこにこそ神は語りかけてこられる、とナウエンは語ります。繊細な洞察に満ちた信仰生活に関するエッセイです。

【大雨と竜巻が去った後の青空。雲の形がいつもと違う。雲と空の青が輝いています。】